体型と病気のリスクについての研究が進んでいる。メタボ健診を挙げるまでもなく、とにかく「痩せれば健康」が“常識”だと考えられている。だが、逆の結果が出た調査もある。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏はこう語る。
「英・ロンドン大学を中心とする研究グループが2015年、同国の医学誌で『痩せ型の人は認知症発症リスクが高い』と発表しました。
調査では、40歳以上の英国人約196万人の医療データを解析。BMI(体格指数。「体重kg÷身長mの2乗」で算出)が20未満の『痩せ型』は、同20以上25未満の適正体重の人より認知症発症リスクが34%も高かった」
日本認知症学会専門医で神奈川歯科大学附属病院の眞鍋雄太医師が解説する。
「健康で標準体重を維持してきた人が、直近の数年で痩せてきた場合は、認知症を発症するリスクが高くなっていると考えられます。認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー病は、脳にアミロイドβという物質が沈着することで起こりますが、その場合、発病の1年前くらいから体重の減少が認められるという研究論文が存在します」
ワシントン大学医学部「アルツハイマー病研究センター」の2006年報告では、449人の高齢者(65歳以上)を平均6年間追跡調査したところ、認知症でない人の体重は年間約0.27キロ減ったのに対し、アルツハイマー型認知症を発症した人は体重減少がその倍になったという。