ダービーの翌週から、条件戦で3歳馬と古馬が同じレースで走るようになっている。今年から降級制度も廃止され、レースの傾向に注目が集まっている。競馬歴40年のライター・東田和美氏が考察する。
* * *
昨年まではダービーの翌週から4歳馬の収得賞金を2分の1として扱っていた。たとえば2勝して「1000万円以下」レースに出走していた収得賞金900万円の馬は、450万円として扱われ、一つ下の「500万円以下」のレースに出て3歳1勝馬と走っていた。
かつて出走馬が少なかった時代、4歳以上の古馬を有利に出走させることで頭数を確保しなければならなかったからだ。その後出走頭数はさまざまな原因で確保されるようになり、高額条件馬の減少など、逆に弊害が目立つようになったため廃止されることになった。
同時にレースの呼び方も収得賞金を元にした「500万円以下」が「1勝クラス」、「1000万円以下」が「2勝クラス」、「1600万円以下」が「3勝クラス」と変わった(新馬・未勝利やオープンは従来通り)。おりしも、CMの影響で若い女性ファンが増えていることを実感するが、ビギナーにとっては分かりやすいと好評だ。
昨年までの「降級馬」は以前も勝ったことのあるクラスで高勝率を上げていた(それが顕著だったことも廃止の一因だった)が、今年からは、2勝していれば3歳も4歳も同じレースで走るようになっている。「同じ2勝ならキャリアを積んだ年上の馬の方が強いのではないか」という見方もあるが、負担斤量などは3歳馬に有利だし、若く成長過程にある馬と、同じクラスで長い間勝てない馬との闘いとなるとどうだろうか。
6月第2週目までに最下級条件の「1勝クラス」は25レースあり、出走頭数は3歳馬133頭、4歳馬143頭、5歳以上103頭だったが、結果は3歳馬が降級廃止後最初の阪神7レースを11番人気で勝つなど14勝、4歳馬は7勝、5歳以上馬は4勝だった。
これが「2勝クラス」になると、3歳馬は16頭出走して3勝。一方4歳馬は57頭出走していながら3勝のみ。昨年までなら降級して「1勝クラス」に出走していたわけだから、なかなか苦労している。むしろ5歳以上の馬が出走頭数も勝利数も多い。昨年までに上のクラスから降級し、それでいて今年は準オープンから降級してくる強い4歳馬がいないのでのびのび走っているということだろうか。
もちろん、2週目までの結果だけで断じることはできないが、条件戦の予想スタンスが昨年までと変わっている。昨年までは降級する4歳馬がこの時期を狙ってきた。今年からは、年齢に関係なく、暑さが本格化する前に2勝目(あるいは3勝目)をあげて、「秋」に備えたい馬が躍動する季節なのかもしれない。そういった意味では、今秋から始まる北海道シリーズの条件戦にも注目だ。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2019年6月21日号