梅雨時に咳や微熱が続く──なんてことはないだろうか? 風邪に似た症状なので放っておきがちだが、実はこれ、家の中のカビが原因かもしれない。目に見えないけれど、この時期、確実に増殖しているカビ。撃退法を知って梅雨を快適に過ごそう
「空咳が続くけれど痰は出ない、息切れがして、熱が出ることもある。そんな時は、風邪だけでなくカビによるアレルギーも疑ってみてください」
と、カビによる病気の専門家で医学博士の亀井克彦さんは言う。ここ数年、カビアレルギーの患者は増えており、特に、家で過ごす時間が長い30~40代以上の主婦が罹りやすいという。高齢化に伴って、患者は今後も増え続けるとみられている。
「梅雨時にこれらの症状が出ても夏風邪だと思われ、放置されたり、誤った対処をとられがち。しかし、悪化したり慢性化すると治療が難しくなり、最悪の場合、死に至ることもあります」(亀井さん・以下同)
◆カビはアレルギーや感染症を引き起こす
カビは家中のどこにでもいるが、特に風呂場などの水回り、畳、カーペット、エアコンなど、湿気が多く、通気性の悪い場所に大量発生する。
「カビは大量の胞子を放って空気中を漂っています。その大部分は肉眼では見えませんが、温度・湿度・エサの有無といった増殖するための好条件がそろうと、大量に増えて姿が見えるようになります」
カビが見えるほど大量に発生した部屋にいれば、当然のことながら、毎日カビを吸い込むことになり、健康被害も出る。
「カビが引き起こす症状で多いのが、アレルギー性の夏型過敏性肺炎。この患者が増えるのは5~10月です。トリコスポロンなどのカビを吸うと肺の中で炎症が起こります」
夏型過敏性肺炎には急性と慢性の2種類がある。急に激しい咳や熱の症状が出るのが急性で、気づきやすい。それに対して症状は軽いが、秋冬まで長引くのが慢性で、気づかれないことが多く、進行すると、肺の機能が失われる「肺線維症」にもつながる。
カビによる健康被害は、アレルギーだけではない。感染症(肺真菌症)も起こる。吸い込んだカビが肺に感染・増殖し、咳や発熱、呼吸不全などを引き起こすのだ。病院で亡くなる人の20人に1人は、肺や肝臓、脳などがカビに感染しているという報告もある。
「最も数が多く死亡率も高い感染症は、肺アスペルギルス症です。抗菌薬(抗生剤)が効きにくいのです」
では、カビから身を守るには、どうすればいいのだろうか。
「カビをすべて取り除くことは不可能ですが、掃除で量は減らせます」
夏風邪のような症状が続く時は、早めに近くの呼吸器内科などを受診すると同時に、大掃除をするといいだろう。
※女性セブン2019年6月27日号