新幹線が童謡で「時速250キロ」と歌われたのは、開業の翌々年1967年のこと。2020年に導入予定の、最高時速360キロメートルを超える新型新幹線N700Sに試乗したライターの小川裕夫氏が、その乗り心地をリポートし、今後の展望を解説する。
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6月6日、JR東海は2020年のデビューを目指して開発を進める新型新幹線N700S系の速度向上試験を報道陣に公開した。
現在、日本の大動脈でもある東海道新幹線は最高時速285キロメートルで営業運転している。
対して、N700Sの最高速度は時速360キロメートルとされている。しかし、これまでの走行実験では時速330キロメートルまでの運転にとどまっていた。今回の速度向上試験では、それを30キロメートルも上回る時速360キロメートルに挑戦した。
東海道新幹線の最終電車を見送った23時41分、N700Sは米原駅をゆっくりと出発。わずか4分後、報道陣を乗せたN700Sは時速300キロメートルに到達した。
そして、近江八幡市と野洲市の市境で時速360キロメートルへとスピードアップ。通常時の時速285キロメートルと比べても、特に振動や騒音は気にならなかった。それだけ、騒音や振動が低減されているということなのだろう。
N700Sは約4キロメートル、時間にして約1分間を時速360キロメートルで走行。一瞬ではあったが、362キロメートルを記録する場面もあった。つまり、N700Sはさらなるスピードアップする可能性を秘めている。
速度向上試験後に京都駅ホームで実施されたカコミ取材で、JR東海新幹線鉄道事業本部の上野雅之副本部長は改めて2020年の東京五輪開幕までにN700Sの営業運転を開始すると力を込めた。そして、過去の試験走行では「時速363キロメートルまで出したことがある」(同)という最高速度にも言及した。
しかし、2020年にN700Sが登場しても、すぐに東京駅―新大阪駅間の所要時間が短縮されるわけではない。「N700Sが運行を始めても、営業運転は最高時速285キロメートルのまま」(同)だと言う。
時速360キロメートルを出せるN700Sにも関わらず、最高時速が据え置きのままになる理由は、旧型車両のN700とN700Aの存在がある。