グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(70)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
秋草学園短期大学学長で、淑徳大学名誉教授の北野大氏(77)が持ってきたのは、モンブランの筆記具。
喜寿を迎えてもなお週6日の職をこなす北野氏。新聞片手に階段を歩き、電車を4回乗り換える通勤は、片道約1時間50分。歩数は1日1万歩。「運動と考えれば苦はなく健康の秘訣」と笑う。そして、健康同様に大事にするのは“人との繋がり”と語る。
「老いての最大の財産は人脈です。私がこの歳で生き甲斐ある職に就けるのは、人との縁を保ってきた賜物だと思っています」
モンブランの筆記具はその人脈作りを担うツール。お礼状、挨拶状などは、いつも手帳に忍ばせている葉書に万年筆で直筆し、素直な気持ちを伝えてきたのだ。
「モンブランは品がいいから好き。ボールペンもシャープペンシルも常に持ち歩く相棒です」
終活で泣く泣く本を処分するなど、身の回りの整理を始めた。学長の任期は残り2年。継続か否かは来年秋に判断するという。
「辞した際は好きな推理小説を読み耽り、夫婦で地中海クルーズも夢見ますが、何をしても生き甲斐ある一生を過ごしたいね」
【プロフィール】きたの・まさる/1942年、東京都生まれ。秋草学園短期大学学長、淑徳大学名誉教授。明治大学卒業後、製薬会社に入社するも学者を志し東京都立大学大学院へ。専門は環境化学。1987年からタレント・講演活動も行なう。ビートたけし氏の実兄
◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペースリーブ
◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。
※週刊ポスト2019年6月28日号