薬局で5~6種類以上の薬を処方されている人の割合は65歳以上で約3割、75歳以上では約4割にのぼる(厚生労働省「平成29年社会医療診療行為別統計」)。高齢になるにつれて処方される薬の数は増えていく。
同時に、薬の種類が多くなるほどに、薬を飲み残してしまう「残薬」が問題になっている。単なる飲み忘れだけでなく「すでに飲んだ」と勘違いしたり、飲むのが面倒になったりするほか、「もう治った」と自己判断で飲むのをやめてしまうなど、その原因は様々だ。
今年73歳になった神奈川県在住のAさんが、こう明かす。
「よく行く喫茶店でモーニングセットをとるのを楽しみにしているが、朝食後に飲まねばならない薬が全部で8種類もある。最近は飲み下すのにも時間がかかるようになり、店のテーブルで広げるのが恥ずかしくて、『店を出てから飲めばいいだろう』と思っているうちに、そのまま飲み忘れてしまう」
種類が多い上に、食前、食後、食間など飲むタイミングがそれぞれ違っていたり、1日2回の薬と3回の薬が混じったりしている場合はより複雑になる。真面目に飲もうと思っている人でも、飲み方を間違えてしまうリスクをゼロにするのは難しい。「多剤併用」の重大な問題である。
◆1錠の大きさは変わらない
薬によって患者が生活上の制約を受けることや、用法通りに服用できない事例が目立ってきていることを受け、厚労省は昨年5月末、「高齢者の医薬品適正使用の指針」の中で、薬の種類や飲む回数を減らす方法について取りまとめた。