1960年代後半から1970年代前半にかけて一世を風靡したグループ・サウンズ(GS)。1961年に結成されたザ・スパイダースでベースを担当していた加藤充氏が、グループに加入したきっかけとビートルズの前座の話が来たときのエピソードを明かす。
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10代の頃はギターを弾くといっても『湯の町エレジー』とか『影を慕いて』みたいな曲しかなくてね。そのうちFEN(在日米軍向けラジオ放送)から流れてくるハンク・ウイリアムスやハンク・スノウといったウエスタンの曲にのめり込んで……やがてサンズ・オブ・ウエストというバンドを組んでベースを弾くようになりました。その頃はウッド・ベースでした。後に京都では有名なナイト・クラブとなるジャズ喫茶「ベラミ」や大阪のジャズ喫茶「ナンバ一番」、三ノ宮の「月光」、神戸の「白馬車」とかに、電車で楽器を持って通ったものです。
スパイダースに誘ってくれたのは克夫ちゃん(大野克夫)です。彼は後からサンズ・オブ・ウエストにスチールギターで入って来たんですけど、先にスパイダースにスカウトされて東京に行っていて、「今いるベースが体調壊しちゃったんで来てくれない?」と急に言ってきて。僕は将来、京都に帰って家業の寿司屋を継ごうと思っていたので、「2年だけ」というから引き受けたら、結局帰してもらえませんでした(笑い)。
初期の頃は色んな外国人アーティストと共演しましたよ。エレキブームの時にはベンチャーズ、アストロノウツ、サファリーズ……新宿厚生年金会館でビーチ・ボーイズとも一緒にやりましたね。リバプールサウンドがブームになるとピーター&ゴードン、ハニーカムズ、アニマルズ。アニマルズといえば渋谷のリキパレスで彼らの前座をやった時、当時彼らの有名な曲だった『Boom Boom』って曲を先にやっちゃったんです。「まずいよ」って言ったんだけど、ムッシュが「オレ達のは向こうと違って踊りがついてるから構わないよ」って。イントロが始まったらボーカルのエリック・バードンが楽屋から出てきて、幕の間から見ていました(笑い)。