国内

「人は見た目が9割」の風潮に苦しみ続ける中年男性の嘆き

ストレスで太ったら周囲の目が大きく変わった

『人は見た目が9割』という新書がベストセラーになったのは、2005年のこと。このヒットを境に、この書籍が本来、伝えている内容ではなく、人を見た目で判断して何が悪いのかと平然と口にする人が世の中に増えた。そんな世間の雰囲気によって大いに割を食っている「見た目が良くない」中年男性たちの嘆きを、ライターの宮添優氏がレポートする。

 * * *
「痴漢対策として、安全ピンを持ち歩くべき」

 ネット上でこんなにも過激な議論が巻き起こるほどになったのは、確かに痴漢などの性犯罪者が多く存在している背景がある。

 しかしその一方で、痴漢や性犯罪について過敏すぎる人たちから、あらぬ疑惑をかけられ、日常生活を送ることさえままならなくなった人々がいることについては、あまり知られていないのではないか…。

 千代田区内の公園に現れたのは、肥満体型にしわくちゃのシャツ、スラックス姿の山崎義之さん(仮名・50代)。一見するとうだつの上がらないダメサラリーマン然とした出で立ちだが、れっきとした大手新聞社の社員。早稲田大学法学部を卒業し入社したあとは、九州や関西で記者として活躍し、40代で東京本社の営業局に移動した。

「営業といっても飛び込みではなく、既存の取引先とやりとりをするだけ。動かなくなって一気に太ってしまったんですが、ストレスもそれなりにあり、頭も一気に薄くなった。目は昔から悪く、分厚いメガネをかけています。この時期は汗も大変、タオルが絞れるほどですからね」(山崎さん)

 お気の毒ではあるが、その風貌はお世辞にも「かっこいい」「清潔」とはいえない。鼻息荒く巨体を揺らし、常に汗を拭きとる仕草を見せる山崎さんは、電車で隣りあいたくないタイプだ。しかし当の本人も、自分の「気持ち悪さ」は十分に理解していると肩を落とす。

「俺みたいな汗っかきの百貫デブ、そしてハゲ。気持ち悪いに決まってますよ。でも、このために痴漢に間違われたり、女性から蹴りを入れられたり、男性からも肘打ちをされたりする。朝の電車には怖くて乗れなくなり、社内でも盗撮してるんじゃないか、若い女性社員をいやらしい目で見ているのではないかと噂を立てられて。その反動からか、食べたり飲んだりが前以上にやめられなくなってしまった」(山崎さん)

 実は山崎さん、関西赴任時代に結婚し、今では一男一女のパパでもある。東京・大田区のタワーマンションに住んで、日曜になれば、愛車のアウディで家族でレジャーを楽しむ”イケてるパパ”だ。ファッションにも興味があり、大学時代にはストリート系雑誌のファッションスナップページも数度掲載されたことがある。しかし今では、おしゃれを楽しみたくとも合うサイズの服がなくもっぱらジャージ姿。シャツとスラックス姿では、小物をどんなにオシャレにしても焼け石に水で「単なるキモいデブ」(山崎さん)にしかならないのが実情だという。

「地下鉄に乗っていたところ、いきなり後ろからキャー!と悲鳴が聞こえて。私の汗で濡れた腕に触れた女性が叫んだんですね。その女性の彼氏は、私のことを怒鳴り散らして、次の駅で降ろされて駅員呼ばれて…。痩せてカツラでもつければいいのか…。というかこんなにも見た目でないがしろにされなくてはならないのかと」(山崎さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン