オレオレ詐欺などに代表される“特殊詐欺”にはたいてい、上部組織(暴力団など)が存在する。上部組織の指示のもと、下部の詐欺グループが犯罪を行うのが一般的だ。
各詐欺グループは主に、銀行や役所の職員を名乗って被害者宅に電話をかける「掛け子」、ATMからお金を引き出す「出し子」、被害者宅に現金などを受け取りに行く「受け子」、共犯者を集める「勧誘役(リクルーター)」などで構成される。
逮捕されるのは、末端メンバーである出し子や受け子が多いのだが、彼らはどのように詐欺に加担することになるのか。
◆紹介やアルバイトが詐欺の入り口
「よくあるのが、地元の先輩や同級生など、地域的に繋がりがある人物に誘われるパターンです」(弁護士法人シトワイヤン代表弁護士の堀井準さん)
この6月、明治大学の学生が中学校の同級生を特殊詐欺の受け取り役に勧誘し、逮捕された。神奈川県警察のオレオレ詐欺被疑者96人へのアンケート調査によると、その年代は20代が46%、10代が38%と8割以上が10代~20代の若者である。そして、全体の70%が「地元の友達・先輩」、「学校の同級生」、「職場の同僚・上司」など、顔見知りに勧誘されたという。
「誘う側は、相手との仲を深めたうえで、“いいバイトがある”と誘います。人のいい子ほど断り切れず、軽い気持ちで詐欺グループに巻き込まれてしまいます」(詐欺や悪徳商法に詳しいジャーナリスト・多田文明さん)
一方、最近増えているのが、インターネットでアルバイトとして募集する方法だ。
「こういったアルバイトは、『高額バイト』などと検索するとヒットするものの、求人情報誌には載っていません。履歴書の提出を求められず、面接もないままメールやSNS上でやり取りをしたうえで“採用”されることが多いんです」(堀井さん)
つまり、簡単に仕事にありつけるうえ、普通に働くより稼げるというわけだ。オレオレ詐欺逮捕者の犯行動機の80%が「一時的な金稼ぎ」(神奈川県警アンケートより)であることからもわかるように、楽して稼ぎたい人ほど、引っかかりやすい。
「採用されると、足がつきにくい無料の通話アプリなどで指示され、被害者宅や待ち合わせ場所で、キャッシュカードや現金の入った封筒などを受け取ります。その後、指定された送り先に届けるなどして、上部組織にお金が渡るよう手配させられるのです」(堀井さん)
仕事内容としては宅配のアルバイトのようで、本人も“受け子”とは知らされないため、罪の意識もない。逮捕されて初めて、自分が犯罪の片棒を担がされていたことに気づくケースも多いという。しかし、知らなかったからといって、罪がなくなるわけではない。
「どんなアルバイトだろうが、履歴書の提出もせず、メールのやり取りだけで採用されるはずがありません。そこを変だと思わない世知に疎い若者が狙われるのです」(堀井さん)
※女性セブン2019年7月4日号