盗みも人間の所業ゆえ盗人が愚痴を言うこともあるだろう。だが、こうやって記録に残ることは極めて稀なはずだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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泥棒に入った店で、たいした収穫が得られなければガッカリする。百歩譲って、そこまでは何とか理解できる。だが、わざわざ店主の貧しさを罵るメモを残す行為はどうだろう。そもそも、そんなメモを書いている時間があるなら、さっと逃げろという話ではないのか。
そんなおかしな事件が起きたのは、5月5日のことだ。
陝西省のメディア『西部ネット』(5月25日)が報じたところによれば、事件が起きたのは貴州省貴陽市白雲区。同区公安分局の艶山紅派出所に一本の通報があった。
被害に遭ったのは同市七一路にある一軒のレストラン。ただ、空き巣被害の通報だったのに、実質的な被害はなかった。派出所の警官が現場に到着して驚いたのは、被害のない店内に、侵入したと思われる犯人の残したメモがあったことだ。
そこには、「ここには現金が何もない。入るに値しない店だ。無駄足だった」といった、侵入してガッカリしたことがつづられていたのだ。犯人は、それだけにあきたらず店主の貧しさをあざ笑うような言葉をメモにびっしり書いて立ち去ったという。
およそ三時間後、監視カメラ映像の追跡から犯人は逮捕された。記事では詳しく書いていないが、おそらく未成年だったのだろう。犯人は15日間の拘留だけで釈放されたのだったが、その間、罰として自らが書き残したメモと同じ文面を100回も書かされたという。