「聴力」の衰えは老後生活の明暗を分ける。『老人性難聴』は「年齢」に次ぐ認知症のリスク第2位にもなることから、決して放置すべきでない。ただし、間違った対策をすると逆効果になる可能性も。
「綿棒を使ってゴシゴシと耳掃除をする方がいますが、健康な状態の耳であれば耳垢は線毛によって自然と外に出るようになっているため必要ありません。逆にこすりすぎると傷つき、外耳炎になることもありますし、綿棒でかえって耳垢を中に押し込んでしまうこともあります」(川越耳科学クリニック院長の坂田英明氏)
正しい対策をすればある程度耳を鍛えることは可能だが、劇的に聴力を改善できるわけではない。聴力の低下が顕著になってきたら、やはり耳鼻科を受診して、聴覚検査を受けることが大切だ。その結果によっては「補聴器」の装用を考えた方がいい。
「日本では補聴器をつけることを“恥ずかしい”“わずらわしい”などと考えて敬遠する人が多いです。難聴・補聴器に関する調査『JapanTrak 2018』によると、補聴器をつける必要のある人で実際につけている割合はイギリスで約47%、ドイツで約37%なのに対し、日本ではわずか約14%と先進国の中では一番少ない。
しかし、近年の補聴器はデジタル式になり、性能が大幅に進化した。形状もスタイリッシュなものが次々と登場しています。かつては眼鏡をかけていることが“格好悪い”という時代がありましたが、今はもはやファッションの一部になっていますよね。すでに欧米では補聴器はファッションになっているので、日本でもそうなる日は近いのではないでしょうか」(同前)
論語曰く「六十にして耳順う(みみしたがう)」とあるが、音や声に耳を傾けられる聴力は60歳過ぎても健康に生きる上で大切なのだ。
※週刊ポスト2019年6月28日号