父の急死によって認知症の母(84才)を支える立場となった本誌・女性セブンのN記者(55才)が、高齢者のスキンケアの重要性を紹介する。実は、湿度が高い夏でも保湿は重要なのだという。
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認知症で独居の母(84才)は今年の春頃、突然、顔の皮膚が白いうろこのようになり、ポロポロとはがれ落ちた。初めて見る光景にうろたえたが、原因はすぐに判明した。
いつも私が母に届けている化粧水と乳液が、すっかり切れていることに気づかずにいたのだ。長年の習慣だったはずのスキンケアができないことを訴えようとして忘れてしまったのか、ともかくしばらくの間、入浴後や洗顔後に何もせずにいたらしい。慌てていつもの化粧品を購入して渡すと、数日後にはうろこはきれいになくなった。
こんなことが起こる前は、高齢者のスキンケアの必要性など考えもしなかった。もはや、しわやたるみを気にする必要もないんだし…と。
しかし、高齢者こそスキンケアを万全にする必要があり、湿度が高くなるこれからの季節も、“保湿”が重要だという。多摩ガーデンクリニック院長で皮膚科専門医の武藤美香さんに聞いた。
◆加齢とともに皮膚はどんどん乾燥する
「ほかの臓器と同様、皮膚も加齢により機能が衰えていきます」と、武藤さんは言う。
確かに、高齢で肌がどんなにきれいな人でも、若者のみずみずしく張りのある肌とは違う。皮膚のすべての層の厚みが薄くなるのだという。
皮膚は、紫外線や寒暖、乾燥、衝撃、異物や病原菌などの侵入から体を守る“バリア”の役割をする臓器だ。
いちばん外側の層[表皮]では、角質細胞がレンガのように積み重なり、外からの刺激をブロックし、皮膚の水分が失われるのを防いでいる。また、紫外線を浴びると基底層にある色素細胞がメラニン色素を作り、DNAを紫外線から守る働きをする。
次の層[真皮]は主に膠原繊維や弾性繊維でできており、皮膚の柔軟性を保ち、痛みやかゆみを感じる神経も集まっている。また、表皮~真皮にある汗腺が汗を出すことで体温を調整し、角層に水分を供給し、表皮細胞由来の脂質と混ざって皮脂膜を作り、角層の水分を保持している。
この下にあるのが、外力や寒暖から体を守ったりエネルギーを蓄えたりする[皮下脂肪層]だ。
「皮膚が乾燥するときれいに並んでいた表皮細胞が乱れて、皮膚の重要な役割である“バリア機能”が低下します。こうなると、さらに水分が失われやすく乾燥が進むという悪循環に陥ります。年齢を重ねると、本来の水分保持力も衰えてさらに乾燥のリスクが高くなるのです」