リゾートホテルや旅館の再生に長け、近年では個性豊かな新規施設を次々と開業する星野リゾート。国内外の運営施設は37を数える。大手ホテルグループの“天下”が続いてきた日本で、業界地図を塗り替えつつある風雲児・星野佳路(よしはる)代表が描く今後の戦略は──。
──若者の旅離れが指摘されて久しい。
星野:日本の観光市場の将来を支える層ですから、もっと旅の楽しさをご提案し続けなければいけない。そのために今年2月、「BEB5 軽井沢」という若年層向けに特化したホテルを開業しました。
若い人たちに泊まって頂くには宿泊料金が手頃でないとならないが、一方で「安ければいい」というわけではない。この施設は「時間を気にせず、仲間とルーズに過ごすホテル」というコンセプト。24時間利用できる「TAMARIBA」というパブリックスペースで、自由気ままに過ごすことができます。
──他業種同様に人手不足も深刻ですが、対策は?
星野:ホテル業界ではフロント、飲食サービス、清掃などを分業制にしていることが多いのですが、星野リゾートでは1人のスタッフが複数の業務を担う「マルチタスク制」を導入しています。地方の旅館やリゾートではリクルーティングが難しく、社員の定着率も低かった90年代の経験からです。
マルチタスクには仕事を楽しくする様々なメリットがある。ひとつの業務だけを担当していると、優秀なスタッフが時間を持て余すことに繋がりかねず、これほど苦痛なことはない。複数の職務を担うことで、社員個々人の能力も高まるし、異なる部署にも自由に物が言えて風通しも良くなる。スタッフを育てるのに時間はかかりますが、中長期的に見ると定着率は高まっている。
スタッフのモチベーションを高く維持していくことは、これからの観光業界に一番大切だと思います。