親が子を思う気持ちは人種や国籍を問わないはず。だが、信じがたい事件は起こってしまう。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所の富坂聰氏がレポートする。
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絵にかいたような“鬼畜親”の事件だ。舞台となったのは広東省北部の南雄市である。
ネットメディアである『大洋ネット』と『広州日報』が5月29日付で報じている。記事のタイトルは〈鬼畜親 実の息子を2回も遺棄 代償は地鶏2羽と卵80個〉だ。
事件が起きたのは昨年7月のことだが、子供を遺棄した夫婦に対する判決が下されたのは今年になってからのことだ。
自らの子供を遺棄したのは雛という人物だった。昨年7月18日、オートバイを運転する夫の後ろで6歳の子供を抱いて南雄市社会福利院の前までやってきた。そこで子供に、ここで待つように指示したまま、子供を残してオートバイで走り去ったという。
やがて子供は近所の住民によって保護されたが、社会福利院が通報したことで事件となった。間もなく雛夫婦の存在が明らかになり、事件解明の過程で、夫婦は以前、1カ月になったばかりの子供を、遠い親戚で子供を欲しがっていた夫婦に売っていたことが発覚した。それはわずかな薬代と、2羽の鶏、そして80個の卵と引き換えだった。
しかし、子供には生まれつきの障害があったことで、親戚から戻ってきた。その子供を6歳になって、もう一度捨てたというのだ。雛には、懲役1年、執行猶予2年の判決が下された。