「保険は転ばぬ先の杖」とはよく言ったものだ。しかし一口に“杖”といっても長さや値段など、数え切れないほどあるうえ、そもそも「歩けるうちは使わない」という人もいるだろう。とはいえ、もし転んでしまったら――? 本誌・女性セブンは、手術や検診、緩和ケアなど、がんの実態を知り尽くしている名医たち13人に、それぞれが「入っているがん保険」について徹底取材。すると、6人ががん保険に加入していないと回答した。
とはいえ、「加入しない」選択をした医師も「加入する」選択をした医師も共通していたのは自身の健康状態に留意し、“まさか”に備えていることだ。順天堂大学の緩和医療学研究室の医師、宇井睦人さんは「自分はがん保険には入っていない」としながら、こう説く。
「多くのがんは検診をしっかり受けていれば早期に発見でき、お金もかかりづらいです。自分の父親が肺がんになったのですが、早期だったため1度の手術のみの治療で、さらに日本では高額療養費制度を利用できるため自己負担をかなり抑えられました。その経験に加え医師として現在の検診の精度もわかっています。
だから、もちろん年齢などリスクによっても異なりますが、がんになってからの不安を大きく見積もりすぎて高額ながん保険に入るよりは、早期発見のためのがん検診などをしっかり受けておく方が根治につながり、最終的な健康や幸せにもつながるのではないかと考えています」
つまり、がん検診はもとより、人間ドックなども含めて、こまめに受診し、日頃の生活習慣に気をつけることが重要、というわけだ。
加えて、医師との関係性をつくっておいた方がいいと言うのは元国立がん研究センター勤務で医療ガバナンス研究所所長の医師、上昌広さん。
「医師といい関係になっておくことは保険に入るのと同じくらい大切です。というのも、保険診療にできるかできないかは医師に大きな裁量が与えられていますし、本当に今必要な治療が何かを一緒に探って教えてくれる。そういう医師がいれば、それは保険の特約よりも心強い」
今回の取材で、がん保険に入っている医師は半数程度という結果だったが、あらためて考えてみてほしい。彼らは医学の知識を持っており、さらに、いざという時に役立つ医療者の人脈も豊富だということを。そういったもののない私たちは、素直に保険に頼るべきなのかもしれない。
※女性セブン2019年7月4日号