高級食パンブームが続き、トースターも高級路線のものが売れ筋となっているなか、三菱電機から焼き立ての食パンのような食べ心地が再現できる商品が発売された。一見トースターには見えないこの商品だが、ジャー炊飯器の開発に定評のある同社ならではの発想から生まれたものだった。
ここ数年、注目を集めているのが、焼き立ての食パンをトーストせずにそのまま食べられる“生食パン”。食パン専門店には生食パンを求めて連日行列ができるほどの人気ぶりだ。そんななか、この4月、三菱電機から、トーストをまるで焼き立ての食パンのように味わえる『ブレッドオーブン』(実勢価格約3万3000円前後)が登場した。
開発にあたり、まずは「食パンをトーストすることの意味」を追究するところから始まった。普通のトースターは、パンを“焼く”のではなく、すでに焼き上がっているパンに焼き目をつけているに過ぎない。それゆえ、焼いている時の焦げ臭をトーストのにおいと感じる人が多い。そうではなく、トーストすることによって焼き立ての香りと食感をよみがえらせることはできないかと考えたのだ。
同社の主力商品といえば、ジャー炊飯器。長年培ってきたおいしくご飯を炊く技術を、もう1つの主食であるパンにも生かせないかと研究が始まった。
『ブレッドオーブン』で一度に焼ける食パンは1枚。従来のトースターは4枚一気に焼けるものもあるなかで、ユーザーのニーズと合わないのではないか?という議論もあったが、おいしく食べてもらうには、1枚焼きの形が理想的だと結論づけた。そこから、従来の部品を半分のサイズにするなど、いかにコンパクトに仕上げるか、設計陣の苦労が続いた。
もう1つの特長は、2枚のプレートで上下から食パンを挟み、密閉状態で焼き上げること。炊飯器の技術を応用した「密封断熱構造」を採用し、ヒーターの熱、食パンから出た水分と香りを逃がさない仕組みにした。これにより、庫内に蒸気が充満するため、パサパサしやすい耳やパンの内側まで水分が行き渡るというわけだ。
高級食パンユーザーは、一斤購入しておき、切り分けて冷凍保存する人が多い。そこで、冷凍した食パンをそのまま焼ける「冷凍モード」を搭載。焦げ目をつけず、焼き立てふわふわの食パンを再現できるようになっている。こだわったのは、食パンに水分を足さず、素材そのものからおいしさを引き出すということ。開発陣は、何度も試作と試食を繰り返した。
発売後、SNSやレビューサイトでは軒並み「おいしい!」という声が集まった。また、完成後の試食イベントでも今までパンの耳が苦手で食べられなかったという子供が「これならふわふわで食べられる!」と2~3枚食パンを平らげるという場面もあったという。
フレンチトーストや卵などをのせたトッピングトーストも失敗なく自動調理できるので、小さな子供がいる家庭でも活躍間違いなしだろう。
※女性セブン2019年7月4日号