年金の受給開始は60~70歳の間で選択が可能だ。60歳からもらうと30%減、70歳からだと42%増となる。国や年金機構は「繰り下げが得」と喧伝するが、定年後に支出が多いのは60代。「繰り上げ」で生活費を補填するのは有力な選択肢だ。
ただし、繰り上げ受給のための手続きは面倒が多い。60代前半の特別支給、65歳での受給開始の場合では年金請求書が送られてくるが、繰り上げる場合は自ら「老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書」などを年金事務所まで取りに行くなどする必要がある。“繰り上げられます”というお知らせはない。社会保険労務士の北山茂治氏が語る。
「特別支給の年金(報酬比例部分)をもらい始めた時に、同時に基礎年金の繰り上げ受給を選ぶこともできる。ただし、これについても、“そういう選択肢がある”と年金事務所から通知はありません」
限られた世代だけが60代前半に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」と、額が減ることと引き換えに60代前半に受給する「繰り上げ受給」が混同されやすいので要注意だ。「特別支給」は請求書が年金機構から送られてくるが、「繰り上げ」は年金事務所で書類をもらうなどしないと申請できない。
※週刊ポスト2019年7月5日号