今から30年前、日本人が大リーグで活躍する姿を誰も想像できなかったように、プロ野球始球式も予想を超えた進化を遂げた。
昭和の頃、地元の知事や市長が形式的に行なう儀式のひとつだった始球式が、平成に入ると女優やタレントが頻繁に登場。巨人が1992年の宮沢りえを皮切りに、毎年本拠地開幕戦で中山美穂や安室奈美恵などのスターを起用したことで、野球界全体に波及した。
当時ノーバウンドで届く女性タレントは珍しかったが、“神スイング”で話題になった稲村亜美が2016年に球速100キロ超を記録。最近では、単なるセレモニーの域を超え、始球式での投球自体が注目されるようになってきた。
5月29日の楽天―西武戦で大役を務めた女優・奥山かずさ(25)は、10歳の時にイチローの本に感銘を受けて野球を始め、中学高校ではソフトボール部のエースとして活躍。大舞台で綺麗なフォームから外角低めにストライクを投げ込み、球場は大歓声に包まれた。
「投球前、楽天の平石監督に『120キロ出しちゃおう!』と気さくに声をかけていただき緊張が解けました。マウンドの感触は懐かしくて、今回は83キロでしたが、次は必ず100キロ出したいです」(奥山)
6月13日に日本ハム―広島戦に登場したタレントの鈴木ちなみ(29)は、前日のヤフオクドーム(福岡)に続いて2日連続の始球式。投球が三塁側に大きく逸れたのは移動疲れだったか!?
令和の時代となって始球式はどんな変貌を遂げるのか、優勝争いとともに注目だ。ちなみに鈴木奈々は4月27日の楽天-ロッテ戦で「待って!」「緊張する!」と叫び、なかなか投球動作に入らず、試合開始が4分遅れて物議を醸した。
取材・文■岡野誠
※週刊ポスト2019年7月5日号