史実に残る“美女”たちの食生活をのぞいてみると、そこには美貌を保つために食材や摂取法にこだわりぬいた貪欲な姿が垣間見える──。
◆エリザベスI世/鮭でアンチエイジング
鮭を好んていたというのは、16世紀のイグランド女王・エリザベスI世。『歴史を織りなす女性たちの美容文化史』(講談社)の著書もある美容家のジェニー牛山さんによると、彼女は健康意識が高かったという。
「エリザベスI世はヘルシー志向で、宗教改革の一端として肉食を禁じる『肉断ち』を復活させました。これによりお肉を食べられない期間は、淡水魚のスープを食べていたといわれ、特に鮭のスープを好んでいました」
ミス・ユニバースの強化合宿で1日に2度出されることもあるというスーパー美容食材の鮭には、女性にうれしい成分が詰まっている。白澤抗加齢医学研究所の所長で医学博士の白澤卓二さんが説明する。
「免疫力をアップさせるビタミンDやビタミンEのおよそ1000倍の抗酸化力を持つ、アスタキサンチンが老化を促進させる活性酸素を抑えるとされています」(白澤さん)
◆エリザベート/野菜も肉もジュースに
ウエスト50cmを死守すべく生涯を費やしたのが、19世紀後半のオーストリアハンガリー帝国皇后・エリザベート。中高年になっても若い頃のベストプロポーションに執着して、年中ダイエットをしていたという。作家・歴史エッセイストの堀江宏樹さんはこう話す。
「彼女はオレンジ、ぶどう、りんごなど果物のジュースを飲むだけのダイエットを行っていました。固体よりも液体であれば体形に影響しないと考えたのでしょう」
極端なダイエットに夫のフランツ・ヨーゼフ皇帝が胃酸過多で死ぬのではないかと危惧していた、という記録も残っているほど。
「ウィーンにあるハプスブルク家の夏の離宮・シェーンブルン宮殿には、エリザベートのためだけに果物や野菜を育てた庭園があり、家畜も飼われていました。固形物を断っていたエリザベートは、肉をもジュースにしていました。仔牛の生肉から生き血をしぼり愛飲していたのです。彼女は旅行中でもジュース療法を貫き、肉ジュースのための家畜たちも連れて旅をしたそうです」(堀江さん)
そもそもダイエットとしてジュースしか摂取しないのはどうなのか。
「食べ物を咀嚼することは、消化や吸収にとても重要。そのため、すべてをジュースにするのは栄養学的に問題があります」(白澤さん)
やはりよく噛んで食べるべきのようだ。
※女性セブン2019年7月11日号