グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(70)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
俳優の竹中直人(63)が持参したのは、愛するコムデギャルソンのジャケット&好きな洋服。お洒落でコムデギャルソンの着こなしは天下一品。撮影時のジャケットも同ブランドで、ブルース・リーのTシャツ、英国デザイナー、クリストファー・ネメスのベストに重ねて纏う。
「ギャルソンは稼げるようになった27歳の時、綿麻混紡コートを買ったのが最初。袖を通すと、エネルギーを身体に感じ、魂を揺さぶられる感覚になったんです。愛すべき洋服となりました」
そのアンチエイジングを感じさせる装いとは裏腹に、黄泉の国へ旅立つ友や先輩方が増えた。
「思いを強く感じていた人が世を去ってしまうのはとても悲しいですね。でも死は決して終着点ではなく、死の向こう側がある……そう感じれば恐れなく受け入れられるのかもしれない」
竹中流葬儀プランを聞くと、遺影がモニターで動き、弔問者に『ヨッ!』と挨拶する案が飛び出た。最後まで真面目におふざけとは如何にも竹中氏らしいが、死へはひとつ懸念が。「痛いのだけは嫌だな。なんつって」
【プロフィール】たけなか・なおと/1956年、神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業。1983年お笑いでデビュー後、各分野でマルチな才能を発揮し活躍。NHK大河ドラマ『秀吉』で主役を務め、高視聴率を記録。映画監督としては『無能の人』で数々の賞を受賞。
◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペースリーブ
◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。
※週刊ポスト2019年7月5日号