国際情報

韓国軍の蛮行伝える「ライダイハン像」 文政権はどう応える

歴代韓国政権はベトナム戦争での「加害」を公式に認めていない(時事通信フォト)

 韓国政府がこれまで認めてこなかった「ベトナム戦争での加害」が、にわかにクローズアップされている。イギリスで、韓国軍による性暴力被害者を象徴する「ライダイハンの母子像」が制作され、全世界に公開されたのだ。ベトナム戦争時の虐殺事件や混血児「ライダイハン」の取材を続けるフォトジャーナリストの村山康文氏が報告する。

 * * *
 韓国はベトナム戦争時、米軍に次ぐ延べ32万人超の兵士を投入し、その間、ベトナム中部のあちこちで虐殺事件を起こした(韓国軍の派兵は1965年10月~1973年3月)。虐殺事件の現場は100か所以上、被害者数は最大3万人という調査結果もある。

 韓国軍はさらに、現地の婦女を強姦し、あるいは売春婦を妊娠させ、多くの「ライダイハン(韓国人男性とベトナム人女性の混血児)」が生まれた。その数は最小1500人(朝日新聞1995年5月2日付)から最大3万人(韓国「釜山日報」2004年9月18日付)と推定されている。私自身、これまで10年以上にわたり取材を続けているが、未だにその全容は明らかにできていない。

 だが、ベトナム戦争後、韓国の歴代政権はそうした「加害の歴史」に向き合うことはなかった。特に近年は、韓国政府に謝罪や補償を求めるベトナム国内の動きを、韓国との経済関係を重視するベトナム政府自身が押さえ付けてもいる。

 そうした中、イギリスで設立された民間団体「ライダイハンのための正義」が、6月11日、ロンドンの集会で「ライダイハンの母子像」を公開した。母子像は、同団体のメンバーでもある英国人彫刻家が制作した高さ230センチのブロンズ像で、ライダイハンとその母親、すべての性暴力被害者を象徴するものだという。

 集会には、イスラム教過激派組織「イスラム国」の性暴力を告発し2018年のノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんや、英国の元外相で同団体の「国際大使」を務めるジャック・ストロー氏らが参加。韓国政府がベトナム戦争中に犯した性暴力を認め、実態調査を行なうようアピールした。

 さらに同団体は、ライダイハンで作家のチャン・ダイ・ニャットさんとその母親チャン・ティ・ガイさん、同じくライダイハンの母親であるヴォー・ティ・マイ・ディンさんの3人の連名で、文在寅韓国大統領宛ての公開書簡を送ったという。韓国政府に、国連人権理事会による調査への協力と、ライダイハンと韓国軍兵士の親子関係を調べるDNA鑑定に応じることなどを求めている。

 長年取材してきた「ライダイハン問題」が英国で大きな動きを見せるとは正直予想していなかったが、韓国・ベトナム両政府が真実の歴史に蓋をする中で、一石を投じた同団体の活動をまずは賞賛したい。

関連記事

トピックス

“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
尹錫悦前大統領(左)の夫人・金建希氏に贈賄疑惑(時事通信フォト)
旧統一教会幹部が韓国前大統領夫人に“高級ダイヤ贈賄”疑惑 教会が推進するカンボジア事業への支援が目的か 注目される韓国政界と教会との蜜月
週刊ポスト
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン