国際刑事警察機構(インターポール=ICPO)の孟宏偉・前総裁が6月下旬、中国天津市の中級人民法院(日本の地方裁判所に相当)で「被告」として姿を現し、中国公安省次官などの政府高官時代に約1446万元(約2億2600万円)相当の賄賂を受け取っていたことを認めた。孟は「反省している」と供述するなど改悛の情を見せたという。判決は後日言い渡される。
孟は昨年9月、ICPOの本部があるフランスのリヨン市からスウェーデンを経由して北京に国際空港に到着したあと消息が途絶えおり、公の場に姿を現したのは、ほぼ9カ月ぶり。
中国当局は今年3月、孟が腐敗問題や党の規律違反などで取り調べを受けていることを発表していたが、罪状が確認されたのは初めて。フランス在住の孟の妻、グレース・モンさんは「フランス政府が保護してくれなければ、私と子供2人も拉致されていたか、殺されていたはずだ」などと仏メディアに訴えており、この5月にフランスへの亡命が認められた。
中国共産党機関紙「人民日報」によると、孟は2005年から2017年までの12年間で、中国公安省中国共産党委員会委員や公安省次官、中国海警局長(日本の海上保安庁長官に相当)などを歴任。その役職の職権などを利用して、企業経営者らに便宜をはかり、1446万元相当の現金や贈り物などを受け取っていたという。
孟は2016年11月、中国政府の推薦を受けて、ICPO総会で総裁候選挙に立候補し、全会一致で選出された。ICPOトップ経験者が汚職で逮捕、起訴されるのは初めてで、前代未聞の不祥事といえる。
中国の趙克志国務委員(副首相に相当)兼公安相は昨年10月、孟の罪状などについて、公安部門の実権を握りながら習近平指導部による反腐敗闘争で失脚した元党最高幹部の周永康・元政治局常務委員(収賄罪などで無期懲役)と関連付けて言及。その「害毒による影響」を徹底的に取り去らねばならないと強調しており、孟が周の腹心として、周とともに腐敗問題に深く関与するなど特殊な関係にあったことを明らかにしている。