金融庁の審議会による報告書が、「老後生活で2000万円が不足する」と示したことが世間をざわつかせている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は、貯金も必要だが、貯筋、生活習慣や加齢によって痩せていく筋肉を維持し少しでも上向きにする「貯筋」をすすめ、自分の身を自分で守る意識の大切さについて説く。
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ぼくはこれまで、人生100年時代を元気に生きるには「貯金より貯筋が大事」と言ってきた。だが、金融庁の審議会が、人生100年時代に備えて、おのおの資産形成すべしとまとめた報告書によると、「貯金も、貯筋も」必要になるということだ。
「貯金」と「貯筋」がある人とない人では、老後の健康やQOLの格差は大きくなるだろう。長生きするのも、なかなかつらい時代になったものだ。
「貯筋」といっても、筋肉ムキムキになる必要はない。筋肉は、生活習慣や加齢によって、どんどん痩せていく。この下り坂をできるだけ平坦にしたり、やや上り坂に近づけたりすることが「貯筋」である。
たとえば、日本整形外科学会が行なっている「ロコモ度テスト」がある。高さ40cmの台に座って、片足で立ち上がることができないと、ロコモ度1と判定される。ロコモ度1の人は、筋力の低下が始まっており、運動を習慣づけながら、たんぱく質やカルシウムなどを含んだ食事をとることをすすめている。