役者として活躍するだけではなく、社会貢献のための活動を積極的に行う杉良太郎に今、再び注目が集まっている。これまでの活動、そして役者としての“杉様伝説”について、本人を何度も取材してきたコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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日本の芸能界において、「ここ一番で一肌脱ぐ大物」といえば、杉良太郎だ。
先日、75歳の誕生日を前に、運転免許証を返納。多くのマスコミが集まる中で、高齢者ドライバーによる事故についても語った。また、6月25日には、15歳のときから、実に60年も刑務所・拘置所の訪問を続けたことで、「法務大臣顕彰状」を授与されたことも話題に。
そのほか、ベトナムでのボランティアや震災への支援など、一肌どころか、何枚脱いでるのというくらい、さまざまな活動を積極的に行っている。
近年はドラマでも『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』で元ホストのあやしい陰陽屋(錦戸亮)が通う居酒屋「狐火」の主人役で出演。常連にしか出さない絶品の油揚げを陰陽屋に出して渋い味を出した。また、『下町ロケット』では、大企業「帝国重工」の社長として、重要シーンにのしのしと現れ、社内の不穏な空気をひとにらみで押さえてしまう。大物感は絶大だ。
もちろん、昭和テレビ世代は、『水戸黄門』の初代助さんや『遠山の金さん』などで大人気となり、その色気のある流し目で「杉様」と女性ファンから追いかけられた姿もバッチリ記憶していると思う。私もご本人や当時の関係者に何度か取材をしたが、
「刀はもとより、柔術を使って悪人たちを投げ飛ばす杉流の殺陣で毎回ふすまを4、5枚破り、年間すごい数になった」
「『遠山の金さん』で奉行の金さんがお白州で悪人を裁く際、悪いやつなのに、すごく反省している心情をゲストがいい芝居で見せてくれると、その刑を『はりつけ』から『百叩き』にしたこともある。その逆で悪人のリアクションが足りなかったりすると、『こいつは打ち首!』にした」
「弁当のオーディションも杉様自身が実施。10時と3時のおやつタイムも作った」などと、現場伝説を聞くたびに驚いたものだ。
しかし! 杉良太郎のパワーが炸裂したのは、時代劇だけじゃない。現在、テレビ神奈川で再放送中の『大捜査線』。これは杉主演の刑事ドラマだが、さすがアクション刑事全盛時代の番組だけに、やたら激しい。たとえば、誘拐事件を捜査する加納刑事(杉)は、犯人の知人らしい男を発見すると、商店街を追いかけて殴るわ蹴るわ。確かにその男も軽犯罪をしていたのだが、なにもそこまでしなくとも。また、張り込みの現場にもグレーのスリーピーススーツに黒いシャツ、ストライプのネクタイ、黒眼鏡といういでたちで物陰に隠れているのだが、かなり目立つのである。
テレビ神奈川ホームページの解説文には「捕り物帳をそのまま現代劇の刑事ドラマへと置き換えた異色の作品」とあるが、まさしく江戸の熱血同心と魂は通じている。そして、極め付きはこのドラマの主題歌。タイトルもズバリ『君は人のために死ねるか』。さすがだ。踊らない『大捜査線』は、すさまじいのである。
誰に何を言われようと、独自の道を歩む。こんな大物が少なくなった。杉様には、令和のドラマでも一肌脱いで、ビシッと締めてほしい。