臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、闇営業問題におけるロンブー淳の心中をプロファイル。
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「今回のこと…亮と話しました」
ロンドンブーツ1号2号・田村淳さんの6月7日のツイッターは、こんな言葉から始まっていた。
ギャラは一切受け取っていないと、相方の亮さんは淳さんに言ったという。
「皆さんはどう思われるかわかりませんが」と前置きをした上で、淳さんは「僕は亮の言葉を信じたいと思います」と綴っていた。
長年一緒にやってきた相方の言葉を信じたいという気持ちは、痛いほどわかる。仲の良い友人に、仕事仲間に、パートナーに信じてほしいと言われれば、それが事実かどうかわからなくても、その言葉を信じたい、信じようとなるのではないだろうか。人にはこういう傾向が少なからずあると言われている。それを「真実バイアス」という。
真実バイアスとは、「他者のメッセージを真実方向に偏って判断する傾向にある」(『嘘の心理学』村井潤一郎編<ナカニシヤ出版>)ということである。つまりメッセージを受け取る側が、それが実際、嘘か本当かという真偽にかかわらず、本当であると判断する傾向のことであり、淳さんの言葉を借りれば、「どう思われるかわからないが亮の言葉を信じたい」ということだろう。
このバイアスが強くなる背景には、メッセージを送る側の態度も関係しているという。送る側が一貫して正直に見えていたならば、その態度から受ける印象は、メッセージの受け手にとって非常に大きくなるというのだ。
実際、淳さんは「亮は今まで僕に一切嘘をついたことがないです」と書いている。裏返せば、淳さんは亮さんから常に真実を伝えられていたことになる。ここまで言い切れるのは、彼に対して確固たる信頼があったからだ。
真実バイアスの実験では、嘘を正しく嘘と見破ることよりも、本当のことを正しく本当だと見抜く方が、正答率が高いという結果がある。淳さんは、これまでずっと彼の真実を正しく見抜けていたのだろう。
自分と比較することでも、真実バイアスが強くなった可能性もある。「僕は何度も亮に嘘ついた事があるけれど…」という言葉からわかるように、自分と比べて、自分と違って、淳さんにとって亮さんは正直な人間だという印象が強かったのだ。
だが一方「どう思われるかわからない」と前置きしたこと、「信じる」ではなく「信じたい」という言葉を使ったことから、「もしかして…」という疑念が心のどこかに生じていたことも確かだろう。心の中でかなりの葛藤があったはずだが、真実バイアスから相手を疑うことをためらい、事実がわからないのでとりあえず信じるという心理が働いたのだと思われる。
吉本興業から亮さんに謹慎処分が出た日、淳さんはツイッターに「嘘をつかれた事が本当にショックでした」と書いている。バイアスが強かっただけに、ショックは半端なく大きかったと想像できる。
「昔の正直者で真っ直ぐなところがなくなったらもう亮じゃない!」とまで亮さんに言ったという淳さんだが、「しっかりと反省した亮とまたコンビの活動を続けられたらと思います」と、今の思いも綴っている。
「誰よりも厳しい目を向けたいと思います」と言う淳さんから、亮さんが信頼を取り戻せるのはいつになるだろう。