山開きラッシュのこの時期、日本各地の名山には平地では味わえない「非日常」を求めて多くの登山客が押し寄せる。近年はハイキングの延長という感覚で山登りを始めるシニアも増えているが、初心者が戸惑う「山小屋の洗礼」が待ち受けているようだ──。
定年後に登山デビューした都内在住のA氏(67)が、昨年の夏山での出来事を振り返る。
「緩んだ靴ひもを直そうと山小屋前のベンチに腰掛けたら、主人らしき男が飛び出してきて『お客じゃないなら座らないで!』といきなり怒鳴られて面食らいました。ほんの1分も座ってないのに……」
いま、中高年を中心に空前の登山ブームが訪れている。総務省「社会生活基本調査」(平成28年)によれば、過去1年に登山・ハイキングをしたことがある人の割合は65~69歳男性が12.5%で全年代のなかで最も多く、60~64歳男性(11.5%)も高い割合を占めた。
“定年後に登山”がいかに定番かを示すデータだが、A氏のほかにも、ビギナー登山者に話を聞くと、山小屋への不満が続出した。
「悪天候で雨具の装着に手間取り、少しだけ到着時間が遅れただけで『もう夕飯は出せないよ』と断わられた」(63歳・男性)
「日帰り登山の予定でしたが、体力の消耗が予想以上に激しかったため予約なしで小屋を訪ねると、『土間なら寝てもいいよ。ありがたいと思って』と言われました。雨でぬかるんだ泥の土間で一夜を明かすことになりました」(65歳・男性)
◆山小屋オーナーは“世襲制”?