近年、あごを巡る健康トラブルが増えている。厚労省『歯科疾患実態調査』(2016年)に基づいた推計によれば「口を開くときに“カクッ”といった音が鳴る」「痛みを感じる」などの症状を抱える「顎関節症」の患者数は推定1900万人とされる。
歯科医らが組織する日本顎関節学会も2018年に『顎関節症治療の指針』と題する治療ガイドラインを初めて作成した。その内容は、6月12日放送の『ガッテン!』(NHK総合)でも紹介され、顎関節症の原因はあごの筋肉の“こり”であると解説、大反響を呼んだ。
この、“あごのこり”に注目することが重要なのは、その影響が「肩」や「腰」など、他の部位にまで及ぶからだ。
顎関節症治療の第一人者で、元東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部部長の木野孔司・歯科医師はこう解説する(以下、「」は木野氏)。
「あごの筋肉が緊張すると、側頸筋や僧帽筋など首から背中にかけて広がる筋肉がつられて緊張し、肩こりを発症します。また、これらの筋肉の緊張状態が続くと、交感神経が優位になり、血流が悪くなって腰痛や頭痛、疲れ目を発症します。
そうして生じている痛みやこりは、患部を直接ほぐすのではなく、『あごの筋肉』の緊張を解消することで取り除けるのです」
◆「マウスピース」が効かない
「あごのこり」が生じるメカニズムとはどのようなものなのか。