浅草・駒形橋のたもと、隅田川沿いに位置する「駒形前川」では、風情ある景色を眺めながら、ゆったりと鰻を堪能できる。創業は江戸末期の文化文政期。200年以上引き継がれるタレは、空襲や地震を逃れてきたという。
「関東大震災のときは、タレの入った壺を大八車に乗せて逃げたと聞いています」(7代目・大橋一仁さん)
鰻を幾度も返しつつ焼き上げる熟練の技によって、艶やかな飴色に仕上がる。重箱の蓋をあければ、香ばしさをまとった鰻が姿を現わす。タレは江戸前の辛口でさっぱり。身はふんわりと味わい深い。
醤油とみりんしか使わずに継ぎ足された秘伝のタレ。詩人の高村光太郎や作家の池波正太郎も駒川前川の味を愛した。
老舗の味を守りながら、新しい食の提案も行なう。スペインワインの輸入販売も手掛け、ここでしか味わえない鰻とワインのペアリングも楽しめる。
■駒形 前川
住所:東京都台東区駒形2-1-29
営業時間:11時半~21時(L.O.20時半)
※売り切れ次第終了
定休日:年中無休
●取材・文/戸田梨恵、撮影/内海裕之
※週刊ポスト2019年7月12日号