令和の時代となり、新たな天皇陛下が即位された現在、上皇陛下(85才)は公務から離れられ、皇居内の生物学研究所で専門のハゼの研究を続けられたり、上皇后美智子さま(84才)と共に都内のテニスクラブをお忍びで訪問されたりと、日々を慈しむように過ごされている。
そんな上皇陛下だが、2002年末に前立腺がんが見つかり、2003年に手術を受けられ、術後はすぐに公務にも復帰された。
当時の陛下をいちばんそばで支えていたのは、美智子さまだった。陛下に病名を伝え、治療方針やリスクについて説明し、手術を取り仕切った国立がんセンター名誉総長の垣添忠生さん(78才)が言う。
「がんの専門医としてどんな患者さんにも共通して実践しているのは、病状や治療の説明は、ご家族が同席のもとで患者本人に行うことです。患者さんとご家族に、別々に話をすると、隠し事がなくても『もしかしたら、自分にだけ知らされていないことがあるのではないか』と患者さんが疑心暗鬼になることがあります。陛下にお伝えした際も、隣に美智子さまが必ずいらっしゃいました」
垣添さんに積極的に質問を投げかけたのは、陛下ではなく美智子さまだったという。
「美智子さまは、手術の具体的な内容や、術後の副作用で不安に思われることなどを、細かく質問されました。ご説明の際に、長女の黒田清子さんが同席されることもありましたが、『失禁が起きることはあるのでしょうか』といった、病気にまつわるご質問は、いつも美智子さまからでした。対照的に、陛下はいつも黙って聞いていらっしゃいました」(垣添さん)
美智子さまが陛下に代わって医師とやりとりできたのも、普段からお互いの健康状態について話し合われているからだという。皇室ジャーナリストの神田秀一さんはこう話す。
「美智子さまは陛下のご病気について勉強され、知識を持っていらっしゃいました。だからこそ、陛下のわずかな体調の変化も感じ取って、代わりにご質問することができた。陛下と一心同体となって気をつけていらっしゃるからこそ、できることです」
手術のために上皇陛下は3週間入院され、美智子さまは毎日病室に通われたという。
「皇居内で採れたふきのとうを陛下へのお土産に持っていらしたり、陛下が好きな音楽をかけられたりと、少しでも心安らかに過ごせるように献身的に看病されていました」(宮内庁関係者)
垣添さんは、美智子さまは、「がん患者家族の模範」だと言う。
「家族ががんにかかった時にまず大切なのは、患者本人がどうしたいのか、気持ちをしっかり聞いてあげること。そのうえで患者が望むことをかなえるべく、近くで支えることです。その意味では、美智子さまもがん患者家族の模範といえるのではないでしょうか」
※女性セブン2019年7月18日号