【著者に訊け】雁須磨子さん/『あした死ぬには、』1/太田出版/1296円
【本の内容】
本奈多子(さわこ)42歳は映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤めている。仕事ができない同僚に怒りつつもハードに働く毎日だが、ある夜、心臓の動悸が止まらなくなる。〈やだ まって まって まって まって 映画祭も途中だし 部屋だって片づけてない〉…もしかして更年期障害かも? 健康に気を遣いつつ、それでも忙しなくハードに仕事をする多子に、中学生の時の同級生から連絡が――。
インパクトのあるタイトルで、余韻が残る。「あした死ぬには、」の後には、どんな言葉が続くのか。
「この先に続く言葉で、どうとでも取れる感じにしたかったんです」
映画の宣伝会社に勤める多子は42歳独身。彼女が直面する40代の壁、体調の変化や周囲の人間関係が細やかに描かれ、「それって、あるある」、という読者の共感を呼び起こす漫画だ。
「多子が経験する不整脈は自分の身にも起きたことなんですが、それ以前から40代の人を描きたいという気持ちはありました。知り合いで、40代でがらっと性格が変わった人が出てきたんですよ。たぶんそれが本当の姿というか、もともと根っこにあるものが隠せなくなった、隠したくなくなったっていうことなのかなと思って」
更年期のホットフラッシュやまったく仕事ができない年上の同僚男性へのイラ立ち、頼れる女性の後輩、目減りする預金通帳の残高など、働く40代女性の「今」を際立たせるディテールがどれも興味深い。
「老後にいくらお金がかかるかっていうのは30代から気にしていました。自分の考えていることが世間の人の悩みから外れているとは思わないので、自然に出てきたエピソードを描いていきます。同じ気持ちの人がどこかにいる、っていうのを常に思って描いてます。読んだ人にほっとしてもらえたらうれしいし、自分としてもありがたいです」
多子の仕事上の知り合いで、病気で余命宣告を受ける人も出てくる。多子が述懐するように、「死ぬのも怖いが、生きるのも怖い」。それでいてまだまだ変化し続ける、40代はそんな年齢だ。
パート先で客から「オバチャン」と呼ばれショックを受ける同級生の塔子ほか、多子以外の40代女性も登場する。作品は今も太田出版のウェブで連載中。これが初めてのウェブ連載だそう。
「これまでは私のことが好きで読んでくださる媒体での連載でしたが、ウェブだと、読者の間口が広がるのがうれしくもあり、怖いところも。描いてすぐ反応があるので、描き上げて掲載するまですごく緊張します」
◆取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2019年7月18日号