ペットへの思いは部外者には窺い知れないものだが、思いが強いがゆえに起こる問題もある。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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湖北省宜昌市は、三峡ダムのある街として観光で訪れる者が多い。この街の公証処(公証人役場)でちょっとした騒動が持ち上がったのは、5月末のことだ。メディア関係者が語る。
「この地に住む58歳の女性が、三峡公証処を訪れ、自分の財産を愛犬に相続させたいと突然相談したというのです。女性の両親はすでに他界し、兄弟も親しい友人もいなかったということで、ずっと心の支えになってくれていた2匹の愛犬に財産を託したいと、その方法について相談に来たということでした」
女性はすでに退職しており、仕事はしていなかった。女性は近頃、自分の体の調子があまりよくないことから、財産の使い道を考えたということだった。女性の財産は不動産が主で、売却すると約60万元(約942万円)。
だが、もちろん公証処にとっては寝耳に水である。動物愛護の心は尊重しますが、そういう手続きはできないと丁重に断られてしまったという。
このニュースは『北京青年報』が伝えているが、記事の中に登場する弁護士は、「西側の国のなかには、動植物に遺産を残すということも可能なケースがあるが、中国ではできない。できるとすれば、ある組織や個人と契約して、遺産を定められたように使うこと」と解説していたが、もとより飼い主の希望がかなえられる保証はない。
ネット上では、このニュースを受けて「生きれば生きるほど、人は犬にはかなわないことを知る」など、様々な書き込みがされていてたという。記事には反応も多く「なんて孤独なんだ」、「親のない子供たちを探して、その子たちに犬をまかせたら?」といった意見が寄せられた。