朝晩の気温差がある季節の変わり目は、猫も風邪をひきやすいと、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長の佐藤貴紀さんは言う。
「猫に風邪に似た症状が出ると、俗に“猫風邪”といわれますが、そういう病気があるわけではありません。くしゃみや鼻水、鼻づまり、せきなどが、人間の風邪の症状とよく似ていることからそう呼ばれています。そのほかの症状として、目やにが出たり結膜が腫れる、涙目になる、口内炎ができるなどの症状が見られる場合もあります」(佐藤さん・以下同)
軽症であれば、1~2週間程度で症状は緩和するが、重症化すると、命にかかわるような重篤な事態に陥ることもあるという。人間の場合、ちょっとした風邪なら病院に行かないという人もいると思うが、この考えを猫にも当てはめるのは危険だ。
「猫の場合、人間よりも体が小さいので、重症化するのに時間はかかりません。取り返しがつかなくなる前に、風邪のような症状が出たら、すぐ動物病院を受診しましょう」
猫風邪は、ウイルスや細菌などの複合した病原体に感染することで発症する。温度や湿度の変化が激しい季節の変わり目は、猫も免疫力が低下しやすいため、ウイルスに感染しやすいという。
「特に空気が乾燥する冬場は、ウイルスが蔓延しやすいので注意が必要です。また免疫力の低い子猫やシニア猫も感染しやすいです」
猫風邪の主な治療法は、抗生剤や抗ウイルス剤の投与となる。大半の場合は、処方された薬をちゃんと服用していれば治る。
猫風邪対策にも有効なワクチンは、3種・4種・5種・7種混合の計4種類。室内飼育の場合は3種混合、放し飼いの場合は4~7種混合が推奨されている。費用は3種混合で3000~5000円程度、7種混合で7000~8000円程度が目安。
また、体温は基本的に耳や肛門で測る。耳の場合は専用の体温計が市販されているが、肛門の場合は人間用の体温計でも代用できる。39.5度以上の場合、熱があると考えてよい。
ただし、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスは、一度感染すると、症状がおさまってもウイルスが体内に残ってしまう。普段は症状がなく元気でも、免疫力が落ちたり、加齢により体力が低下すると、ぶり返すことがあるので、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスについては、定期的なワクチン接種で予防することが重要だ。
また、猫風邪は涙、鼻水、唾液を介して感染する。多頭飼育の場合は感染している猫を隔離した方がいい。
「人と猫の風邪はウイルスが違うので、人から猫へ、または猫から人へうつることはほとんどありません。しかし、猫風邪はいくつもの病原体が複合しているので、その中の1つが人へ感染する可能性もあります。ですので、スキンシップを控えるなど猫との接し方にも気をつけましょう」
たかが風邪と甘くみてはならない。いつもと違うと思ったら、早めにかかりつけの動物病院に相談しよう。
※女性セブン2019年7月18日号