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ネコンシェルジュがグッと来た『トラとミケ』の絵本シーン

『トラとミケ いとしい日々』をネコンシェルジュはどう読んだ?

 ベストセラーとなっている『俺、つしま2』(おぷうのきょうだい作)を始めとして、大ブームが続く猫本。次々と新しい猫本が発売されているが、そうした猫本をくまなく読んでいる書店員さんがいる。紀伊國屋書店で「ネコンシェルジュ」を務める丸山裕子さんだ。彼女は「猫だらけ」の人情味あふれる変わり種漫画『トラとミケ いとしい日々』をどう読んだのか。話を聞いた。

 * * *
 普段、書店の「ネコンシェルジュ」という立場から、猫が登場する作品を片っ端から読み、選りすぐりを紹介しています。ですが、『トラとミケ』は、不思議と猫目線では読みませんでした。

 かわりに目が奪われたのは、猫たちの日常の風景です。私はねこまきさんの作品の、優しい色遣いが大好きなのですが、この作品は全編フルカラーなので、四季折々の情景とともに優しい色遣いがたっぷり味わえます。

 第1話の「陽春の候」に始まり、4月から翌3月まで12話が収録されています。その1話1話に、季節を感じさせる食べ物や小道具が、とても丁寧に描かれているのです。

 例えば第3話の「向暑の候」では、庭の甘夏をもぎ取って砂糖漬けにして寒天ゼリーを作る場面が出てきます。季節は飛んで第9話の「歳末の候」では、干し柿や白菜を外に干していたり、年末ならではの新巻鮭が登場します。

 トラとミケが切り盛りする居酒屋のメニューだけでなく、要所要所に、昔おばあちゃんがよく作っていたような懐かしい季節の食べ物が出てくるんです。それも、こたつなどの昭和な小道具と一緒に。だから、読んでいると「懐かしい」という温かい気持ちやら、「美味しそう」という食欲やら、「この店に行ってトラとミケに癒やされたい」という思いやら、いろんな感情がわいてきます。

 ふたりの居酒屋には、独身女性から熟年夫婦、働き盛りのサラリーマンまでいろんな立場のお客が飲みにきます。その1人1人(1匹1匹)に物語があるので、読者の誰もが、自分に近い境遇の人に思いを馳せることができるんじゃないでしょうか。そして、どこか琴線に触れる箇所があるはず。

 私がグッときたのは、絵本が出てきた場面。本好きなので、絵本が効果的に使われていたのが嬉しかったんです。絵本には、人を励ましたり、楽しませたり、支えたりしてくれる力があります。

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