バラエティーの新たな傾向として、「一般人がメイン」になる番組が増えている。素人たちの面白いキャラが引き出される背景について、コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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先日、このコラムで「テレビカメラが一般人の家に行く番組が増えた」と書いたが、一般の人がメインになる番組も目立っている。『マツコの知らない世界』(TBS系)、『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)、そして、7月から「今まで深夜にひっそりとやっていた」という『かみひとえ』(テレビ朝日系)もネオバラ枠に新登場した。
『マツコの知らない世界』は、タレントも出演しているが、ゲストの基本は特定のジャンルにとても詳しい一般人。「室外機の世界」では、「室外機には高度な機能がある」「メーカーによりこれだけの違いがある」とその奥深さを語り、「種ありぶどうの世界」では「農園で多品種を育ててはいるものの、家計が苦しい」と言い出してマツコに「それでいいのか」と呆れられる。その道にハマった人の情熱に驚くが、それ以上に「室外機」「盆踊り」「ゆで玉子」「おみくじ」などがハマるジャンルとして存在していることにも驚く。
『激レアさん~』は、オードリーの若林正恭と弘中綾香アナ、タレントの客員研究員ふたりが、「医師からハリウッド映画監督になった人」「歌舞伎町で極道に占領されていたホテルから極道を一掃し、売り上げを日本一にした女支配人」など、すごい体験をした人をスタジオに呼び、その経緯を聞く。
この番組の特長は、内容はとてつもなく劇的なのに、時々かっくんとなるほど、緩む瞬間があること。たとえば「少年時代、山の中で8日間遭難した」ジュンタロウさんを紹介する際にも、手書きボードに「山を見るだけでごはん三杯いける」と表記。本当かと聞かれたジュンタロウさんは、あっさり「言ってないです」。…ですよね。
そして、『かみひとえ』では、人々(プロも含む)が動画で自慢の技を紹介。博多華丸・大吉、ココリコとゲスト二人の全員が「スゴイ」と判定すると、スタジオで実際に技を披露できる。初回には、「人間鯉のぼり」((ポールにつかまって、体を水平に支え続ける)の 東大卒パフォーマーなどが、見事「スゴイ」を獲得した。
こうした番組を見て思うのは、ゲストの一般人がとても落ち着いて見えること。それは動画制作などで「発信慣れ」している影響もあると思う。しかし、よくよく見てみると、やはり、進行役のマツコ、若林、ココリコ、博多華丸・大吉が、ゲストの話やキャラクターの面白さをうまく広げているのである。
動画投稿で“すごいネタを持つお宝一般人”と番組制作者は直結した。芸人やタレントが争うように自分の話をする番組は飽和状態だし、一般人出演は増える可能性が高い。ただし、安易な作りでは、動画慣れしている視聴者からは支持されない。かつて、一般人出演番組の名司会者に「出演者の話の順番が多少打ち合わせと違ってもいいと自分は鷹揚に構えつつ、相手をよく見て気を配った」と聞いて、プロの技だと感心したことがあった。確かにいい進行役は、相手をよく見ている。お宝一般人の面白さをどう印象付けるかは、結局、プロの進行技にかかっているのだ。