厚生労働省は2019年6月中旬、ガイドライン「高齢者の医薬品適正使用の指針」を公表した。このガイドラインは、医療機関などに向け、高齢者への不要な薬の処方を減らす必要性や、その具体的なプロセスを説くもの。“とりあえず”薬剤を使用しがち日本の現代医療への問題的として、医療界で話題となっている。
複数の薬をのむ「多剤服用」を防ぐには、一体どういったことをすればいいのだろうか。糖尿病薬を例に、薬を減らす方法を探ってみる。
糖尿病は高血圧などと同様に、血糖値という数値によって病状が把握できるため、減薬しやすい。にもかかわらず、漫然と薬をのみ続ける人が多いという。多摩ファミリークリニック院長で家庭医療専門医の大橋博樹さんはこう話す。
「よく使われる『SU剤』は、すい臓を刺激してインスリンを分泌させる薬で、高齢者には負担がかかりやすい。血糖値を下げすぎた結果、低血糖を起こすケースも散見されるため、真っ先に減らすべきターゲットだと言っても過言ではありません」
実際、SU剤は前出の厚労省ガイドラインでも《可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する》と名指しされている。池袋セルフメディケーション代表で薬剤師の長澤育弘さんが説明する。
「糖尿病治療にあたっては『いきなり薬を使わないように』と定めるガイドラインもある。薬をのめば血糖値は下がるが、食事や運動など生活習慣の改善で下げた方が体への負担も少なくてすむ。
医療現場では効果が確実に出るという理由で早期に薬が使われがち。しかし、薬はあくまでサポート役で、治療のメインは生活習慣の改善です」
しっかりと治療したいのであれば、そもそも薬に頼るよりも、生活習慣の改善の方に取り組むべきなのだ。“サポート役”であるはずの薬を多くのむことは、ピントがずれた治療だと言えるのかもしれない。
※女性セブン2019年7月25日号