カルロス・ゴーン前会長の逮捕の余波を受けて業績悪化に苦しむ日産自動車。だが、販売台数の低迷は、必ずしも不祥事の影響ばかりとは限らない。質より量を求めすぎて魅力的なクルマが少なくなってしまったことも要因だろう。そんな中、“技術の日産”の復活を期待させるようなキラリと光るモデルもある。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が試乗で高評価したのは、日産のモータースポーツブランドNISMOの市販車モデル「MARCH(マーチ)NISMO S」だ。
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“ゴーンショック”に端を発したルノーとのアライアンス危機、販売台数の減少、業績悪化と、何とも精彩を欠く日産。今年6月の株主総会は何とかうまく切り抜けたが、業績回復のメドはまだ立っていない。
グローバルビジネスのなかでもとりわけ厳しい状況に陥っているのは日本市場。今年新型に切り替わった軽自動車「デイズ」はそこそこ売れているものの、収益性の高い普通車の販売が不振だ。
この状況を打開するのは容易ではない。西川廣人社長が「日本市場を軽視するような判断があった」と認めるように、ラインナップは手薄もいいところ。販売台数を稼げているのはサブコンパクトの「ノート」、ミニバンの「セレナ」、SUVの「エクストレイル」くらいのもので、あとは長いものでは10年以上モデルチェンジもせずに放置していたようなモデルばかり。
乗用車のようなエンドユーザー向け商品を扱う企業が苦境に立った時、それを打開する有効策のひとつは商品で頑張ることなのだが、頑張ろうにもタマがないのだ。
2年前の完成検査不正や昨年のゴーンショックでブランドイメージは大きく傷ついたが、それは単に不祥事が嫌われたというだけではないだろう。日産を積極的に選ぶ理由に乏しいクルマばかりが増え、ファンのブランドロイヤリティを高めるようなクルマが長いこと出てこなかったことで、日産のコアユーザーの心はすでに日産から相当に離反していた。不祥事はその流れを表面化させたにすぎない。
果たして日産はこのまま、白物家電のようなクルマばかりを作る没個性的なブランドになってしまうのか。コアユーザーが疑念を抱いているのは、日産に日産ならではと感じさせるようなクルマを作る力が今もあるのかということと、日産にそういうクルマを作る気があるのかという2点だろう。