「今日の飲み会は全員参加です!」──職場でそんなことを言われれば、パワハラの4字が脳裏をかすめる昨今。ところがラグビー界では、試合直後に両チームが一堂に集まって盃を交わす“全員参加の飲み会”があるという。
「ついさっきまで肉弾戦をやりあっていた相手とアルコールの入った状態で対峙するなんて大丈夫なのか……」と勝手に心配してしまうが、実はこの“飲み会”は、ラグビー界では大切な伝統行事のひとつだ。
正式名を「アフターマッチファンクション」という(ファンクションとは、「働き」「職務」の意味)。試合後に行われる交歓会のことで、軽食とビールなどのドリンクで歓談するのが通例となっている。
今年9月からのラグビーW杯日本大会を控え、巷では徐々にラグビー熱が高まっているが、試合後にそんな伝統行事があることは、あまり知られていない。日本ラグビーフットボール協会の広報担当者に、アフターマッチファンクションについて聞いた。
「いつから始まったかはわかっていませんが、ラグビーの母国イングランドでは、主催側が対戦相手を歓迎する意味で行われたものとされています。日本にラグビーが伝えられた明治期にはアフターマッチファンクションも一緒に入ってきたと考えられます。お互いにエールを交換し、交流しようというものです」(広報担当者)
ホスト側が会場を設定、軽食やドリンクを用意し、選手の着替え、ミーティングなどが終わったあと、だいたい試合終了後1時間から1時間半後の間に開始される。場所はスタジアム内のミーティングルームなどが使われるが、海外では飲食店を借り切って行われることもあるそうだ。
出席者は選手のほかに試合の主催者、協会関係者、チームスタッフ、レフリーなど。日本のトップリーグの試合などではファンが出席できる特典が用意されていることもある。チームはベンチ入りメンバーが基本的には全員出席するので、総勢50~60人もの規模になるという。