自治体や会社の定期健康診断や人間ドックなどを「受けたから大丈夫」と安心している人もいれば、検査を受けても「念のため別の検査も受けなきゃ……」と不安を募らせる人もいるだろう。
どちらの人にも欠けているのは、「どの検査が、どの病気を、どのくらい見つけられるのか」という情報だ。検査によって「高い精度で見つけられる病気」と「見逃されやすい病気」がある。
胸部X線検査における肺がんの偽陰性率(実際は陽性なのに「陰性」の検査結果が出た割合)は、最大で50%というデータもある(日本医療機能評価機構が複数の研究結果をまとめた報告より)。
厚生労働省の「地域保健・健康増進報告」によれば、2016年度の新規胃がん患者13万人のうち、自治体の胃のバリウム(上部消化管X線)検査で発見されたものはわずか4500人にとどまった。
そのため、近年は「肺がん」「胃がん」の早期発見のためには、別の検査手法が選ばれることが増えてきた。
X線検査に比べて各種疾患の“発見率”が高いのが、「内視鏡検査」だ。バリウム検査で見つかりにくいタイプの胃がん・食道がんを早期発見するには、「胃内視鏡検査(胃カメラ)」が有効とされる。東京国際クリニックの高橋通・院長(循環器科)が解説する。
「胃内視鏡検査では先端部にカメラや鉗子のついた管を口や鼻から挿入し、咽頭、食道、胃、十二指腸などの表面の異常をモニターで見ます。医師が目で直接確認できるため、早期の胃がん・食道がんや胃潰瘍、逆流性食道炎などが診断できます。ただし、胃壁の内部に広がっていくスキルス胃がんは、胃粘膜表面の異常が分かりづらく、胃内視鏡でも見つけにくい。診断する医師の経験や技量が問われます」(同前)