人の不幸にまでつけ込もうとする人間は残念ながらどこにでもいる。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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それは、夏にふさわしい、ゾッとする事件の幕開けだった──。中国の一部の地域では、死者を埋葬する際、お酒や硬貨、または故人とゆかりの深かった物品を一緒に埋める習慣がある。今回の事件の舞台となった江蘇省揚州市宝応県もまた、そうした習慣をもつ地方の一つだった。
6月8日、『環球ネット』が伝えたニュースによれば同県に住む李さんは、昨年10月21日、岳父を亡くした。一族は、その日の午前中に埋葬を終え、李さんも家族と昼食をとっていた。そのとき、李さんの携帯電話がコール音を響かせた。李さんは何気なく画面に目をやったが、その瞬間、凍り付いた。画面に表示されていたのは、なんと岳父からの着信を知らせる表示だったからだ。
李さんは同県の習わしに従い、岳父の埋葬に際し、岳父の愛用していた携帯電話も一緒に埋めていた。驚きはひとしお。しかし気を取り直して考えた結果、やはり親戚たちと一緒に墓地に戻ることにした。すると、案の定、墓の中は空っぽだった。
事件は、若い二人の墓荒らしによって引き起こされたものだが、二人は墓の中にあった高価な「故人の愛用品」を盗んでは遊び歩いていた連中だった。なかには高価な腕時計などもあったというから、実入りは悪くなかったのだろう。
そして李さんの岳父の墓を荒らし、そのなかに携帯電話を見つけたのだった。彼らはそれを売り飛ばす前に、携帯電話に残されたいくつかの履歴から番号を発信して遊んだと考えられている。その結果、警察に逮捕されることになってしまった。二人に下された判決は懲役7か月と1000元(約1万6000円)の罰金だった。