テクノロジーの進化と犯罪発生率や検挙率には密接な関連があると再確認させられる話である。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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天網恢恢疎にして漏らさず――。いまや中国全土が監視カメラで覆われていることは、誰もが知っている。こう聞けば日本人なら、真っ先にプライバシーの問題が頭に浮かぶはずだ。まもなく2億台にも届こうかという勢いの監視カメラに私生活のすべてが見られている、と。
だが、それも悪いことばかりではない。
「窃盗も強盗も、被害の話をめっきり聞かなくなったのです」
そう語るのは、北京のメディア関係者だ。
「監視カメラ網の発達により、スリや窃盗、空き巣、置き引きといった被害は急激に少なくなってきています。実際に、置き引き犯が追跡される動画が、テレビのニュース番組でもどんどん流れていますからね。いまでは忘れ物をしても、見つかる可能性は非常に大きい社会です」
こんな中国にあっても、なお果敢に犯罪に挑んだ夫婦がいる。『観察者ネット』が5月22日付で報じたニュースだが、舞台となったのは四川省豊台区にある一軒の火鍋屋だった。
夫婦が入店しておよそ20分後、夫の郭は「鍋にネズミの死骸が入っていた」と店にクレーム。賠償金として500万元(約8000万円)を要求したのだった。
あの火鍋スープをかき混ぜたらネズミが出てきたとあっては、慰謝料を請求されても仕方がないかもしれないが、500万元とはいかにもデタラメである。
この時点で郭夫婦に疑いの目を向けられるのだが、郭はなんと自ら同地の食品薬品監督管理局に続いて公安局に通報したという。ところが、これが藪蛇となる。店の監視カメラを確認すると、郭が明らかに自分のカバンからネズミを出して鍋にいれるところが映っていたのである。
結果、郭に下されたのは懲役3年だった。