世界で最大のダムとされる中国の三峡ダムが2009年の竣工後、10年を経て、ダムの基礎部分の変形が目立っているという。そのため、「決壊するのではないか」と心配する声が5000件以上も寄せられるなど、大きな関心を集めている。これに対して、三峡ダムの運営企業で中国政府管理下の長江三峡集団公司は7月上旬、声明を発表。ダムの基礎部分は「数ミリ程度移動することがある」としたうえで、「垂直と水平の移動は、重力ダム(重力式コンクリートダム)の変形の法則に合致している」と安全性を強調している。
しかし、ダムがある湖北省宜昌市の観光会社は、ダム周辺の観光地の営業を一時停止すると発表したことで疑惑が拡散。また、地元の政府傘下の観光会社も今年4月から観光客に対して身分証明書による認証を行っており、決壊の噂を広めようとする“不審者”の立ち入りを警戒するなど、決壊情報の打ち消しに懸命だ。
三峡ダムは、中国政府が「百年の大計」として鳴り物入りで建設した世界最大のダム。1993年に着工、16年の歳月と総工費2000億元(現在の為替で約3.1兆円)をかけて2009年に完成した。
しかし、2003年、湛水開始前に中国国務院の技術者らがダムを検収調査した際、ダムの表面に80カ所以上のひび割れを見つけた。2008年の調査でも地盤の変形などが合計5286カ所見つかったほか、ダムの構造物や防水壁にも約1万カ所の亀裂が発見された。こうした事態を受けて建設関係者は突貫工事で修理を急ぎ、予定通り、2009年に竣工したとされる。