総務省の調べによると、昨年5~9月に熱中症で救急搬送された9万5137人のうち、死亡者数は160人だった。命さえ奪いかねない熱中症に自分や周りの人がかかってしまった時、慌てずに対処できるよう、正しい応急処置と防止策を知っておこう。
「熱中症は重症化すると、脳などに後遺症が残り、死に至ることもある危険な病気です。しかし、正しい対策と応急処置を知っていれば重症化は防げます」
こう語るのは、熱中症と脱水症対策に詳しい医師の谷口英喜さんだ。そもそも熱中症は、体温が上がることと、体の水分が失われることが原因となって起こる。高温多湿な環境下で体の水分が不足すると、体内にこもった熱を放出できなくなる。すると、体温が上がり、体調に異変が生じるのだ。
気温だけでなく、湿度が高いことも問題で、そんな中で激しい運動をすると、体温がさらに上がりやすくなり、熱中症になってしまう。湿度が高く、急に気温が上がる梅雨の晴れ間や梅雨明けは、一年の中でも熱中症が多発する時期なので、特に注意が必要だ。
「熱中症といっても頭痛・倦怠感・吐き気など、症状は多様。これらはまだ軽症ですが、放っておけば、脳へのダメージによって起こる意識障害やけいれんなどを引き起こします」(谷口さん・以下同)
熱中症予防にはまず、症状にどんなものがあるのかを知っておくことが大切。そして、自分や周りの人に該当する症状が出たら、呼びかけるかどうかを確認し、返答がなければすぐに救急車を呼ぶ必要がある。
救急車が来るまでの間に涼しい場所へ移動させ、服をゆるめ、氷のうなどで首・わきの下・太ももの付け根を集中的に冷やす。呼びかけに反応がない場合、無理に水を飲ませないこと。返答がある場合には、涼しい場所で水分を自分で補給できるか確認を。症状が改善したら、安静にして十分な休息をとる。