角界のカネを巡る慣習は、一般社会の常識からするとかなり独特なものだ。名古屋場所前に開かれた貴景勝の昇進パーティで、父が“祝儀2700万円を強奪した”と報じられたのも、本来は親方がすべてを差配するものという慣習と異なるために噴出した騒動だった。
「昇進パーティのようなイベントごとは部屋にとって臨時収入の大チャンスです。力士の結婚式なども同じで、親方夫妻が“親代わり”となって、実の両親は“ゲスト扱い”になる。そこでも集まった祝儀のだいたい6割を親方が持っていくが、もちろん明文化された決まりはないから、親方と力士の間で揉め事に発展することもある」(元力士)
2004年に当時の横綱・朝青龍が、今回と同じ新高輪プリンス(当時)で結婚披露宴を行なった際も、祝儀の分け方などを巡って高砂親方(元大関・朝潮)と大喧嘩する騒動が起きている。
朝青龍の場合は、番組出演料など1億円を税務申告していなかったことが発覚。約3000万円を追徴課税されている。
「一事が万事そうで、たとえば十両になった力士が後援者から作ってもらう明け荷や化粧まわし、関取に贈られる幟も、親方を通しての発注が慣例。実際にかかる代金に上乗せした分をピンハネする親方衆がいる。
そういう中抜きが横行する世界ですから、“集めたカネを部屋の関係者以外の第三者が数えてチェックするなんてあり得ない”という考え方になるのです」(同前)
※週刊ポスト2019年8月2日号