「読んでラクになった!」「モヤモヤが共有できて、猛烈に感動した」など話題を集めているコラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さんの対談集『女に生まれてモヤってる!』。同書の中からジェーン・スーさんのコラムを紹介します。
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アメリカを代表するアーティストのビヨンセは、2018年のコーチェラ・フェスティバル(アメリカで行われる大規模野外音楽祭のひとつ)でアフリカ系米国女性として初めてヘッドライナー(大トリ)を務めました。2時間に渡るライブでは自分たちの文化の力強さと美しさを余すところなく伝え、女性に誇りと力を与える素晴らしいパフォーマンスを行いました。Netflix でリハーサルも含めたライブ映画『HOMECOMING』が観られるので、ぜひ観てください。勇気づけられること間違いなしです。
ライブのモノローグパートで、「以前は、黒人女性として私が小さな箱の中にとどまっていることを世界から望まれているように思っていた」とビヨンセは語りました。私はアジア人ですが、小さな箱の中に収まっていることを望まれる感覚はわかります。出しゃばり過ぎないとか、目立ち過ぎないとか、言いたいことを言い過ぎないとか、そういうことです。
子どもの頃から、感じた通りに動くと、それはいつも「過ぎる」状態として捉えられていました。フル出力でやりたいだけやったら、誰かを傷つけたり嫌な思いをさせたりしそうな不安が常にあったのです。実際、人の心を傷つけたこともたくさんあります。力も強かったので、意図せず友人に怪我をさせるようなこともありました。ごめんなさい。
言葉が乱暴だったり言い方がきつかったり力の加減がわからなかったりと、コミュニケーションの方法に難があったことは認めます。しかし、私が男だったら同じように感じたかはわかりません。本当の私はもっと大胆だし、もっと大きな声が出るし、足を踏み鳴らして動きたい。体だってぐるんぐるん動かしたい。もっともっと、私が感じたことを表現したい。でも、そうしたらギョッとした顔をするんでしょう? おかしな子だって笑うんでしょう? あまりにもみんなと違うからって。