『きょうの料理』(NHK Eテレ)でもおなじみの現役最高齢、94才の日本料理研究家、“ばぁば”こと鈴木登紀子さんが、「これだけは遺していきたい」という味を紹介する。
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春から夏にかけて、暖流にのって北上してくるのがするめいかです。「真いか」「夏いか」とも呼ばれ、その水揚げ量はばぁばの生まれ故郷、青森県が日本一。新鮮なするめいかはいか刺しはもちろんのこと、焼いても煮ても、揚げてもおいしいお利口さん。
栄養面でも、高たんぱく、低カロリー、低脂肪と素晴らしいのよ。しかも豊富に含まれるタウリンという成分には血液中のコレステロール値を下げたり、血圧を正常に保つ働きがあるとのことですから、メタボ気味のばぁばは、毎日食べてもいいくらいね(笑い)。
さて今回は、そんなするめいかを使った「いかの鹿の子焼き」をご紹介します。なぜ「鹿の子」というかと申しますと、いかは焼きますと、クルクルッと丸まりますね。その性質を利用するのです。
包丁で格子状に細かい切り目を入れてから焼くことで、丸まった時にかわいらしい模様ができます。それがバンビちゃんの模様に似ていることから名付けられたのです。
格子状に切り目を入れることを「鹿の子切り」、それを焼いたものが「鹿の子焼き」です。いかの下処理はご自分でなさってももちろんよいけれど、お店でさばいてくれるならお願いするといいの。ちゃんと胴と足を分けてくださるから。
ただし、切り目は素早く入れてくださいね。おっとり切っていると、いかに粘り気が出て、ベタベタになりますよ。
お客さまにお出しする時は、胴の部分だけをきれいに盛り付けますが、ご家庭で召し上がるなら、足の部分も皮を除いて長さを整え、一緒に焼いてお出しになるとよいわ。げそならではの歯ごたえ、旨みも楽しめますよ。
■「いかの鹿の子焼き」の作り方(2人分)
【1】いかの下処理をする。いか1杯は、わたを除いて胴と足に分ける。胴は皮を丁寧にむいてよく洗い、きつく絞った濡れ布巾でよく拭いてぬめりを除き、上下をまっすぐに揃えて縦3つに切り分ける。
【2】いかは表側を上に、やや斜め横にしてまな板に置き、厚みの半分ぐらいまで細かい切り目を入れる。
【3】格子になるように【2】にさらに包丁を入れる。
【4】ボウルにいかを入れ、みりん大さじ4、薄口しょうゆ大さじ2、サラダ油大さじ2を順に加えてさっと合わせ、5分ほど置いてなじませる。
【5】フライパンをよく熱し、サラダ油適量を入れて全体になじませてから一旦火から外し、いかを切り目を下にして並べる。中火にかけ、菜箸であたりながら、クルリと丸まったら火を止める。サラダ菜適量を敷いた皿に盛る。
撮影/近藤篤
※女性セブン2019年8月8日号