経済成長著しい中国にとっても、「年金」は社会問題であるらしい。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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2035年、中国の養老金(年金)はすべて底をつく──。7月11日、中国共産党中央機関紙『人民日報』は、〈「注目」 年金の資金はすべて使い尽される? 真相は……〉というタイトルで年金問題を取り上げた。
もちろん全否定することが目的の報道で、記事は書き出しから、〈最近、“年金が2035年には使い尽される”というフェイクニュースがまたしても広がっている。80年代、90年代以降に生まれた世代は本当に年金を受け取ることができないのか?〉と、噂をフェイクと決めつけている。
奇しくも日本でも老後資金が2000万円不足──人生100年時代に備える場合──するというニュースが世間を騒がせたばかりだ。いずれにせよ社会保障費が重いことは、どの国にも共通する悩みになるなか、同じように高齢化社会へとまっしぐらに向かう日中が同じように話題で騒いでいるのだから面白い。
記事の中で、「またしても」という記述があるのは、今年4月に同様の噂がネットを駆け巡ったからである。
逆に考えれば、4月の時点で人社部(人力資源・社会保障省)をはじめ社会科学院などを総動員して火消しを行ったにも関わらず、こうして疑惑が再燃したということで、人々の関心の高さがうかがえるのだ。
発端は、一部の地方で年金の資金が不足しているとの統計が出されたことだったが、これは、支え役の現役労働者が流出する地方と流入する地方との違いから生じてしまった問題であり、誤解を恐れずに言えば「調整すればよい」ということのようだ。
それにしても80后、90后と呼ばれる若者たちが、経済がこのまま拡大してゆくという前提で考えられている年金を無邪気に信じられるはずはないのだから、ちょっとした噂に動揺するのも無理はない。その事情は日本もまた同じである。