育児放棄は中国でも大きな社会問題となっている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国人のイメージの一つには、「子供に大量の資源を投入する」というものがあったように思う。子供の教育にお金を惜しまない民族として、よくユダヤ人と並んで称せられてきた。しかし、それもいまでは昔のことなのだろうか。
中国政府は7月12日、民生部(省)など12部門と合同で〈事実上養育者不在となっている嬰児の保障をさらに確立するための意見〉を出した。
そのなかには養育する能力をもちながらそれを履行しない親に対して、民生部が中心となり責任を追及するという方針が含まれている。罰則を設け、養育費の強制徴収などがなされるという。意見書には人民法院(裁判所)、人民検察院(検察庁)も名前を連ねている。
このニュースには挿絵が添えられている。いかにもチャラチャラした若い夫婦が嬰児を放り出しているその頭上から、「追責」と書かれたハンマーが振り下ろされる絵が描かれており、子供を放っている親からは「只生不養」(生むだけで育てない)と書かれた文字が見える。
中国政府がこうした対策をとるということは、要するに社会に明らかな「只生不養」の現象があるということなのだ。子供や家族を異常なまでに大切にする中国、そんなイメージはいつまでも通じないのかもしれない。