映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優の平田満が、多面性のある役などを経て、リアリティのある芝居を通して実感していることを語った言葉についてお届けする。
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平田満は二〇〇六年にTBSドラマ『白夜行』に出演、全ての悲劇の発端となる変質者的な父親役を演じている。
「『平田満はこういう役者だな』という同じようなオファーが増えるようになり、そう見られることが窮屈になっている時期でした。いかにも小市民で、いかにも善人で、それ以外には何もない。そういう役が平田にピッタリと思われるのは、つらいなと思うようになっていて。
だから、悪い役とか善人に見えても実はどうか分からない役をやってみたかった。もともと、つか(こうへい)さんのお芝居がそうですからね。被害者面をしていても実はそうじゃなかったりとか。人間っていうのは、そういう多面性がありますし、良いお芝居というのはどこかそういう部分があるものです。
それだけに、そういう役が来たのが嬉しかったですね。難しいですよ。自分の中にどれだけそういうものがあるか、という話でもありますから。でも、もし俺だったら──と考えるのは初めての取り組みですから、ありがたかったです」
同年には演劇の企画プロデュース共同体「アル☆カンパニー」を自ら立ち上げ、現在に至るまで定期的に公演を続けている。