薬の最も服用効果がある時間を研究する「時間治療」の研究が進められている。九州大学大学院薬学研究院の小柳悟教授が語る。
「病気や症状が悪化する時間に合わせて薬を服用するというのが『時間治療』の考え方です。薬によって、飲んでから効果が出るまでの時間は異なるため、それぞれの薬の飲む適切な時間を知ることが大切です」
高血圧の治療薬である降圧剤は、その種類によって飲むべき時間が異なるという。朝7時に起床し、夜12時に就寝する人をモデルに、小柳教授が薬の服用タイミングをアドバイスする。
「血圧は、交感神経が活発になる起床時や、体温が高まる午後3時~夕方頃にかけて上昇しやすい。『ARB』や『利尿薬』は朝食後の服用が推奨されています。ARBを夜に服用すると、就寝中の血圧が過度に下がりすぎてしまう。利尿薬を夜に服用すると、夜間に利尿作用が強まり頻尿を起こし、睡眠の質の低下につながるからです」(小柳教授)
起床時や午後3時~夕方でなく、「夜間血圧」が高いケースもある。
「通常は就寝中に血圧が下がりますが、夜間も高いままの患者も約4割います。そうした方は、夕食後から就寝前までに『ACE阻害薬』を服用することで、夜間の血圧を下げて心臓や脳の血管疾患を抑えると報告されています」(同前)
脂質異常症になると、動脈硬化や、それによって脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まる。予防のために服用するのが「スタチン系製剤」(シンバスタチンなど)の脂質異常症薬だ。
「脂質異常症は、血中のコレステロールや中性脂肪が多すぎたり、少なすぎる状態を指します。とくに、コレステロールは夜間に肝臓で多く作られます。シンバスタチンを夕方以降に服用すると、コレステロール値が大きく下がることが分かっています。少なくとも就寝の2時間前までに飲むと効果が高いと考えられます」(同前)
※週刊ポスト2019年8月9日号