長かった梅雨が終わり、とうとう迎えた夏本番。太陽はさんさんと輝くが、夏休みに突入した小学生の子供を持つママたちのグループからはため息が聞こえてくる。
「世帯数が少ないから、今年はプールの監視当番が2回も回ってきた」
「学区パトロールで割り当てられた日は、前々から実家への帰省が決まっていた。当番を変わってくれる人を見つけるのに一苦労」
「子供が楽しみにしている保護者同伴のキャンプ。下の子の世話があるから、夫に行ってもらいたいのに、まったく協力しようとしない!」
子供は学校が休みで毎日家にいても、PTA活動は夏休みにも動きがある。忙しいママたちにとって、「面倒くさい」というのが本音だが、その背景にあるのは、必ずしも“やる気がない”ばかりではない。
今年、長女が小学校に入学し、初めてのクラス委員を務めるA子さんは言う。
「毎年恒例の夏祭りの出し物の話し合いで、せっかくならとインターネットでリサーチをして、他校で行われていた楽しそうなイベントの提案をしてみたところ、『前例がないことはやりたくない』と本部役員がすべて却下。噂には聞いていましたが、ここまで前例踏襲主義だと、参加していてもおもしろくない」
A子さんの言うように、「前年通りにやること」を目的にしているPTAは多い。PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんは、指摘する。
「“例年通り”は最も安全な道。みんなに『これでいい?』と意見を聞かなくても反論が少なく、『どうして変えたの?』という批判も生まれにくい。そうやって“例年通り”が繰り返されるうちに、“例年通りであること”が目的化されてしまうのです。しかし、これでは一体、何のためのPTAなのかわからない」
近年、「ブラックPTA」とも呼ばれ、ネガティブなイメージが定着しているその原因は、「子供たちのため」という本来の目的を忘れ、波風を立てないように建前だけの活動を強制的に行う「PTAのためのPTA」になってしまっていることが大きい。そんな状況を変えるには、「夏休みが勝負」と大塚さんはアドバイスする。
「特に小学校はPTAの仕事が多く、2学期が始まると一気に年度末まで駆け抜けます。すると、また同じように新年度が始まってしまう。何かPTAを変えたいと考えているなら、夏休みから根回しをして、『来年度はこう変えてほしい』ということを少しずつ役員にアプローチしておくチャンスです」
「どうせ変わらない」とあきらめてはいけない。